研究概要 |
1-オクタノール中,グラッシーカーボン電極を電気化学的に酸化処理することにより得られる,エーテル結合を介して1-オクタノールにより修飾された炭素電極(C8-GCE)を用いたボルタンメトリーにおいて,完全に抑制されていたFe(CN)_6^<3->の電極反応がポリアミン塩酸塩共存下回復することを見い出し,その分析化学的応用および挙動発現機構の解明を目的として研究を行い,以下の知見を得た. 1.アミン類の共存下に観察されたFe(CN)_6^<3->の電極反応回復効果は,個々のアミン分子内に存在するアミン窒素の数と共に増大する.2.個々のアミンによる効果の程度はその濃度に依存する.3.観察される効果は,修飾電極表面が疑似ミクロ電極状態となっていることによると推定されたため,未修飾ミクロ電極(micro-GCE)を作成し検討した結果,同様の効果が観察された.4.C8-GCEおよびmicro-GCEにおいて生体内ポリアミンであるヒスタミン,スペルミジンおよびスペルミンを用いて,Fe(CN)_6^<3->の電極反応回復効果を検討した結果,本法がこれら生体内ポリアミン類の検出に,電極の耐久性をも含めて,充分利用可能であることが示された.5.両電極におけるFe(CN)_6^<3->の電極反応回復は,その程度は小さいが,脂肪族カルボン酸によっても観察された.この結果は,これまでの研究結果と共に,共存カチオンと電極表面との相互作用により回復効果が現れることを示唆している.Fe(CN)_6^<3->の他,Fe^<3+>およびlrCl_6^<2->の電極反応に対する共存カルボン酸の効果の検討より,電極電位に依存するプロトンその他のカチオン類の電極表面への吸着量の差が,Fe(CN)_6^<3->等のマーカーイオンの電極反応回復の源となっていることが示された.この知見は,ポリアミンを含む脂肪族アミン類の電気化学的検出法開発に対する非常に有用な情報であり,現在,実用化に向けての検討を続けている.
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