研究概要 |
1.慢性的な社会心理的ストレス負荷である長期隔離飼育によって生じるペントバルビタール誘発睡眠の短縮にGABA_A受容体機能を制御するニューロステロイド(NS)が関与し,(1)プレグネノロン硫酸抱合体のようなGABA_A受容体機能抑制性NSの脳内レベルの上昇,(2)アロプレグナノロンやアロテトラヒドロデオキシコルチコステロンをはじめとするGABA_A受容体機能促進性NSの脳内レベルの低下,または(1)と(2)の両方の変化が本ストレスによって惹起される可能性が示唆された。 2.GABA_A受容体機能を抑制するベンゾジアゼピン受容体逆作動薬と類似した特徴を持つ内因性ベンゾジアゼピン受容体結合因子の誘導、またはその脳内レベルの上昇も本ストレスで惹起されるペントバルビタール睡眠の短縮に関与することを明らかにすることができた。 3.我々はこれまでベトナム人参中の成分がストレス性潰瘍などのストレス病態に対して改善作用を示すことを見いだしてきたが、この成分を用いて長期隔離飼育マウスのペントバルビタール誘発睡眠に及ぼす効果を検討した結果,プレグネノロン硫酸抱合体との拮抗が抗ストレス作用の発現機序である可能性を示す成績が得られた。 4.ベンゾジアゼピン受容体の内因性物質候補の一つであるdiazepam binding inhibitor (DBI)のcDNAをクローニングし,そのDBI遺伝子の脳内発現を検討した結果,慢性的心理的ストレス負荷によってDBIの脳内発現が著しく影響されることが明らかとなった。 以上の成績はNSやDBIなどのGABA_A受容体機能制御活性を有する内因性物質の発現,脳内動態変化が慢性的心理的ストレス負荷による中枢病態の発現に重要な要因となっていることを示すものである。
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