研究概要 |
コレステロール代謝を調節する転写因子SREBPはこれまで2種類のアイソフォームが報告されているが、その機能的な差異については不明な点が多い。そこで、SREBP自身の転写調節を解析する目的でHeLa細胞をコレステロール過剰条件下で培養し、SREBP1,2のmRNAの変動をRNase protection assayを用いて測定したところ、SREBP2のmRNAが細胞内のコレステロール量の変動に応じて増減することを見出した。続いてヒトSREBP2遺伝子の5'上流域を含むクローンを単離し、その塩基配列を決定した。転写開始点を5'PACE法にて解析し、開始点から約120bp上流にSREBP2の認識塩基配列であるSRE-1(ATCACCCCAC)が存在することを見出した。この5'上流域をLuciferase遺伝子を含むReporter geneに挿入し、Luciferase assayを行った。600bpから次第に5'上流域を短くしていったところ、転写開始点から約120bp上流域がコレステロールによる転写調節に必須の領域であることが明らかとなった。さらに転写開始点から約100bpの位置にCCAAT逆配列(ATTGG)が認められた。そこでSRE-1、CCAAT逆配列にそれぞれ変異を導入してLuciferase assayを行ったところ、いびれか一方に変異が導入されるとコレステロールに対する応答性が失われることが明らかになった。CCAAT逆配列に結合する転写因子を同定する目的でこの配列を含むプローブを標識して、HepG2細胞核抽出画分を用いてGel shift assayを行った。本配列に特異的に結合するバンドが検出され、このバンドは転写因子NF-Yに対する抗体でsuppershiftした。以上の事実より、SREBP2遺伝子5'上流域に存在するSRE-1、CCAAT逆配列にそれぞれ結合するSREBP、NF-Yの協調的作用を介して、本遺伝子のコレステロールによる転写調節は行われることが明らかになった。
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