研究概要 |
薬物代謝酵素カルボニルレダクターゼの分子多様性と遺伝子欠損の機構を検討した.以下に本研究において得られた知見を示す. 1.雄性ラット肝臓のミクロソーム画分からメチラポンを基質にして一つ酵素が部分的に精製された.その部分精製されたメチラポン還元酵素は,アセトヘキサミドに対して還元能力をもたなかった.したがって,メチラポンとアセトヘキサミドのケトン基還元反応は異なる酵素によって触媒されることが示唆される. 2.1)ラット肝ミクロソーム画分のアセトヘキサミド還元酵素活性において,顕著な系統差と性差が観察された.しかしラット肝可溶性画分のアセトヘキサミド還元酵素活性においては,系統差や性差は存在しなかった.2)カドミウムの処理は,雄性ラット腎ミクロソーム画分において観察されるアセトヘキサミド還元酵素活性を間接的に低下させた.一方雄性ラット腎可溶性画分では,そのようなカドミウム処理の効果は見られなかった.上述の結果から,ラット肝臓と腎臓に存在するカルボニルレダクターゼの多様性が推察される. 3.雄性ラット肝ミクロソーム画分におけるアセトヘキサミド還元酵素活性の遺伝解析結果は,その酵素活性(表現型)が常染色体上にある共優性の遺伝子によって制御されることを示している.また雌性ラットでは,雄性ラットと異なって,全ての世代で酵素活性を示さなかった.これらの結果から,本酵素活性は限性遺伝されるものと結論される. 雄性ラットの肝ミクロソーム画分におけるアセトヘキサミド還元酵素活性の遺伝子欠損の機構を明らかにするために,さらに多くの研究が進行中である.
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