研究概要 |
本研究においてはエトポシド耐性株KB/VP-4細胞を用いて,エトポシドグルクロン酸抱合体の膜小胞内および細胞外への輸送に多剤耐性蛋白(MRP)が関与しているか,また、活性酸素調節剤であるグルタチオン(GSH)がMRPを介した輸送に影響を及ぼしているかを検討した. 1.KB/VP-4細胞ではGSH抱合体型薬物のみではなく,エトポシドグルクロン酸抱合体の細胞外への過剰な排出が認められ,MRPがGSH抱合体やグルクロン酸抱合体といった化合物の構造を認識しているのではなく,両親媒性の薬物を基質として認識しATP依存的に能動輸送している可能性が示唆された. 2.KB/VP-4細胞をブチオニンスルホキシイミン(BSO)処理することにより細胞内のGSH濃度を減少させた場合,エトポシドグルクロン酸抱合体の細胞外への過剰な輸送が抑制された結果から,GSHがMRPを介した抱合体型薬物の輸送の亢進に寄与していることが示唆された.この結果は活性酸素調節剤を用いた細胞内グルタチオン濃度の制御による多剤耐性の抑制の可能性を示した. 3.KB/VP-4細胞においては,その親株に比べ,Cu,Zn-SOD量は1.5倍に,Mn-SOD量は約5倍に上昇しており,エトポシド耐性発現機構の1つとして活性酸素消去能の上昇が示唆された. 4.SODの一種である細胞外型SOD(EC-SOD)に遺伝子変異が存在することはすでに報告してきたが,この変異により,ヘパリン親和性,内皮細胞結合性やプロテアーゼ感受性が変化することが判明し,EC-SODがもつ抗酸素ストレス防御能の変化が腎疾患,心疾患,糖尿病,高脂血症など病態の発症,進展に関係している可能性および活性酸素調節剤が関与する異物代謝排泄が変動している可能性が示唆された.
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