研究概要 |
1.大腸菌由来グルタチオントランスフェラーゼ(GST)の立体構造の解明 大腸菌GSTとその阻害剤グルタチオンスルフォネートとの複合体の立体構造をX線結晶解析により明らかにした.それにより,次のような重要な知見が得られた. 大腸菌GSTは,哺乳類のα,μ,πクラスGSTや昆虫由来のσクラスGST,植物由来のGSTなど他の細胞質型GSTと基本的に相同な立体構造を持つことが明らかになった.しかしながら,活性部位の詳細な構造には重要な相違が見られた.すなわち,α,μ,π,σクラスGSTで触媒残基ではチロシン残基,昆虫由来GSTではセリン残基の側鎖が触媒基として機能していると考えられている.大腸菌GSTではTyr5とSer11が,そのチロシン,セリン残基に一次構造的に相当すると考えられるにもかかわらず,そのいずれも側鎖は活性部位に位置していなかった.このことはGSTファミリーが,触媒機構に関与する残基の相違により少なくとも3つのグループに分かれることを示唆する. 2.πクラスGSTの基質特異性に関与する領域の解析 ヒトとラットに由来するπクラスGSTの1-クロロ-2,4-ジニトロベンゼンに対する活性の相違を利用して,キメラ酵素及び部位特異的変異体を作製,解析することにより基質特異性に関与する構造の検索を行った.またコンピューターモデリングを用いて実験結果と合わせて検討した.その結果,GSH結合部異を構成するGSTのN端側ドメインと,C端側ドメインのヘリックスD及びFによって形成される空間がCDNBの認識に関わることが示唆された.
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