腫瘍免疫の成立には、宿主免疫担当細胞が癌細胞を特異的に認識するステップが必要である。βケモカインに属するMIP-1αは炎症組織から産生され、T細胞、B細胞に対する走化活性化作用、マクロファージの抗腫瘍活性化作用、サイトカインの産生増強作用を有する。本研究では癌細胞にhuMIP-1α遺伝子を導入して、癌細胞に対する宿主免疫担当細胞の走化性を増強させ、抗腫瘍効果や免疫獲得能への効果増強を期待した。 免疫系の正常なBALB/cマウスとそれに移植できるcolon26結腸癌細胞を選択して、huMIP-1α遺伝子導入の効果を検討した結果、以下のような新知見が得られた。huMIP-1α遺伝子導入癌細胞のマウスに移植後の増殖度は抑制されており、更にマウスの腫瘍拒絶率は高かった。また、同時に肺転移の抑制効果も見られたが、癌悪液質の改善については無効であった。腫瘍を拒絶したマウスについては、更に親株の移植を行ったところ、全例で腫瘍の増殖は認められず、この癌細胞に対する免疫力を獲得していることが示唆された。 更に、我々は、他のケモカインであるMCP-1遺伝子導入癌細胞を用いて、その増殖が免疫調節剤の併用で抑制されることを示した。 以上、本研究では癌の生育や腫瘍免疫獲得におけるhuMIP-1αの影響を遺伝子導入癌細胞を使用して検討し、腫瘍ワクチンの実用化の可能性を示すことができた。また効果的な薬物療法を併用することによって、腫瘍の近傍に侵潤したマクロファージを活性化して抗腫瘍効果を誘導できることがわかった。
|