研究概要 |
旧くから知られている抗利尿ホルモンのバソプレシンは,最近では高血圧や心不全の悪化の原因として注目されている。経口可能なバソプレシンの拮抗薬が開発され,高血圧,心不全,肝性浮腫の治療薬として期待されるようになって種々の実験が臨床応用を目的として精力的になされている。今年度は血圧調節に強く関与している体性動脈系においてその太い動脈(導管血管),細い動脈(抵抗血管)においてバソプレシンの受容体がどのように収縮に関与しているかをV_<1->受容体拮抗薬(OPC-21268),V_<2->受容体(OPC-31260)を用いてそれのバソプレシン受容体の性質を検討した。実験には2つの標本を用いた。太い動脈としてはイヌ摘出大腿動脈リング標本を用いた。バソプレシンは太い導管動脈を濃度依存的に収縮させた。OPC-31260の存在下においてバソプレシンによる濃度収縮曲線は平行に右方に移動した。Schild plotsからOPC-31260のpA_2値は6.88で傾きは1.00であった。一方OPC-21268の存在下においてはバソプレシンの濃度収縮曲線は影響を受けなかった。 一方,細い動脈としてのイヌ伏在動脈潅流標本においてはバソプレシンを投与すると,潅流圧は用量依存的に上昇した。OPC-21268あるいはOPC-31260の前投与により,バソプレシンの昇圧反応は用量依存的に抑制された。以上の結果から血流を制御するように働いている抵抗血管ではV_1およびV_2受容体の2つがバソプレシンによる収縮を仲介しているのに対して,太い導管動脈ではV_2受容体のみが仲介していることが明らかになり,血圧調節にはV_1,V_2の2つの受容体の関与が示された。
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