研究概要 |
ビタミンB1欠乏食でラットを飼育した場合或はマウスの嗅球を摘出した場合記憶障害モデルを作成することが可能であり、前者の記憶障害モデルは飼育期間中比較的早い時期にビタミンB1を補充することによって記憶障害が抑制され、後期のビタミンB1投与では抑制できなかったことからビタミンB1欠乏に基因した障害モデルであると言える。また、この事実は脳内ソマトスタチンの画像解析の結果からも支持される。すなわち、ビタミンB1欠乏によるそれらの記憶保持に対する行動変化は脳内ソマトスタチンの変動と良く相関性を示した。特に、記憶に重要な中枢と言われているCA1,CA2およびDGのソマトスタチン濃度低下がビタミンB1欠乏誘発性記憶保持障害に基因している可能性が示唆された。また、嗅球摘出時の記憶保持障害はビタミンB1欠乏時のそれと比らべて比較的早期に引き起こされたが、記憶保持障害の発現機序はビタミンB1欠乏時と同様、脳内ソマトスタチン濃度の低下に基づくことが認められた。しかし、ソマトスタチン濃度の低下はビタミンB1欠乏時でhippocampus,hypothalamis,thalamus,amygdalaおよびcortex等の広範な部位で認められたのに対し、嗅球摘出時のその低下はhippocampusに選択的にみられた。
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