研究概要 |
(1)臨床検体を用いた,血漿中Sph-1-Pの定量 我々が以前開発したスフィンゴシン-1ーリン酸(Sph-1-P)定量法(Anal.Biochem.230:315-320,1995),つまり,^3H標識無水酢酸によりNアセチル化することにより(これにより、^3H標識C_2-セラミド-1ーリン酸が生成される),健常人の血漿Sph-1-Pの測定を行った.血漿中には,191±79pmol/ml(平均±標準偏差,n=8)の濃度でSph-1-Pが存在することが判明した.患者血漿として劇症肝炎,肝硬変症例12例の測定を行ったが,健常人との比較で有意な差を認めなかった.また,人の尿・髄液・胸腹水に関しても検討を行ったが,これらではSph-1Pは検出されなかった. (2)Sph-1-P測定法の改良 大量の検体のSph-1-P測定を速やかに行えるように,^3H標識C_2-セラミド-1ーリン酸をHPLCにより解析できる系(シリカゲル-オクタデシル基充填カラムを用いた逆相分配クロマトグラフィー)を開発し,標準Sph-1-Pの測定は可能になっている.しかし,最終的な検出に用いるRIモニターの感度が悪いせいか,血漿検体で明瞭なピークが形成されていない.方法を変え,液クロ/イオンスプレーイオン化MS/MSによる検討を行った.この方法で血漿検体中のSph-1-Pのピークが検出された. (3)血漿Sph-1-Pの代謝 ^3H標識Sph,Sph-1-Pを用いた検討で,血小板は血漿のSphを積極的に取り込んでSph-1-Pへと変換して放出し,放出されたSph-1-Pは血漿中で代謝的に安定であることが判明した.
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