研究概要 |
動脈硬化の進展に酸化LDLが関与していることは明らかにされてきた。我々の研究目的は、この酸化LDLの一種でマロンジアルデヒド(MDA)修飾を受けたMDA-LDLを血液中に検出し定量することで、これを動脈硬化を検出するマ-カの一つと考えられないかということであった。 昨年度は、モノクローナル抗体を用いて血液中にMDA-LDLの存在を証明し、これを定量する測定系を確立した。今年度は、この確立された測定系を用いて、健常人での基準範囲を性別、年齢別に検討できた。 (The Lipids,1998,vol9,144-149)さらに、このMDA-LDLを通常のLDLとLDL-受容体、スカベンジャー受容体への結合能、取り込み量を比較すると、MDA-LDLはLDL受容体への結合能が低下し、スカベンジャー受容体へは、結合能、および取り込みが増加していることが示された。血管壁の動脈硬化の成因に関して、このMDA-LDLは重要な関わりを持つことが示され、かつ動脈硬化の指標となるマ-カとなる可能性が示された。(臨床病理、1997,45,47-54) また、このMDA化されたLDLは、動脈硬化に関連のある小分子、高比重LDL分画中に多く含まれることが、超遠心分画法を用いて確認され、このMDA-LDLの測定が動脈硬化の指標となるマ-カとなる可能性が示唆された。(12th European Congress of Clinical Chemistry,1997,D26,Basel)さらに、このMDA-LDLは、動脈硬化に関連のある糖尿病患者群で有意に高値を示すことも示された。(The Lipids,1998,vol9,144-149)
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