研究概要 |
我々は既にIgA型の抗リン脂質抗体(APA)のELISAによる測定法を確立し、総APA高値症例についてIgA型抗体(Aと略す),IgG型抗体(G),IgM型抗体(M)の3 isotype値を測定したが、その結果はA高値と血栓症との関連を強く示唆していた。そこで今回この点を確かめるべく、抗リン脂質抗体症候群の患者でも発症する心筋梗塞(MI)に着目し、検討を加えた。MIの発症に冠状動脈硬化や老化が要因となることは当然多いが、これらにAPAの関与がありうるかどうか,あるいは発症原因が明らかでないMIとAPAとの関連を解明すべく、検討を行った。検体は本院CCUに搬入された患者や心臓カテーテル検査を必要とした患者の血漿を用いた。同時に血小板数やフィブリノゲン量など他の検査との相関も検討した。 測定結果をMI,狭心症(AP),心房細動(af)の3群に大別して健常対照と比較した。心房細動群については動脈硬化が明らかでない対照群として分類した。その結果総APAはAPとMIで健常対照群及びafに比して有意に高値を示し、isotypeに関しては冠状動脈の虚血性疾患であるMIとAPにおいてAが有意な高値を示したのにafでは認められず、Aの虚血性心疾患における血栓形成への関与が強く示唆された。GはMIで高値を示したが、APでは対照と有意差がなかった。APAの完全評価のためにはG,MのみならずAの測定が不可欠であると考える。
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