研究概要 |
独自の超高感度酵素免疫測定法を用いて重症筋無力症の病態生化学的研究を行い下記の研究成績を得た. 1 アセチルコリン受容体(AChR)のα-サブユニットの細胞外ドメイン(1-211)のすべての配列をカバーする12個のペプチドおよび膜貫通後再び細胞外に露出する部分のペプチド1個を抗原としたAChR自己抗体の超高感度酵素免疫測定法(免疫複合体転移酵素免疫測定法)を開発した. 2 この方法により全身型の重症筋無力症(MG)のみならず,従来法でほとんどAChR自己抗体を証明できなかった眼筋型MGの確定診断が可能となった(診断感度94%).これらのことから,本法の確定診断法としての有用性が明かとなった. 3 この方法により全身型症例での胸線摘出術の予後予測が可能となった(感度64%,特異性90%). 4 全身型症例のクラスII-HLAを調べた結果,DQB1*0303,*0302-*0303および*05031がこの方法で測定した抗体価と連動していた. 5 眼筋型症例のクラスII-HLAを調べた結果,DQB1*03型が胸線摘出術の予後に関わっていることが示された. 6 眼筋型症例のクラスI-HLAを調べた結果,HLA-Bが予後に関わっていることが示された. 以上の結果から,全身型では病勢の維持,増悪化にAChR自己抗体が関与しその産生はHLA-DQと連動していること,眼筋型ではそれらには自己抗体は関与せず,むしろ細胞傷害性T細胞が関与していることがクラスI-HLAのタイピング結果から示唆された.
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