研究概要 |
妊娠早期の自然流産の原因として、母体側の原因と胎児側の原因と分けられるが、そのほとんどは胎児側の原因特に染色体異常による。しかし,10-20%は未だ原因の特定されない場合があるといわれている。ある単科産婦人科医院で一年間の自然流産例73例を調べたところ16例(21.9%)に多核白血球浸潤を示す脱落膜が見られた。そこで,原因不明とされる自然流産例の中に上行性感染による可能性があるのではないか調べるために,流産遺残物について組織学的,細菌学的に調査し,更に感染を引き起こす原因と考えられる行為をアンケート調査した。 流産遺残物について75症例を病理組織学的に調べると,39例(52%)に多核白血球浸潤が見られ非常に多かった。この39例中組織でグラム染色で細菌陽性は29例(74%)で、多核白血球浸潤陰性例29例では8例(28%)と有意に低率であった。細菌の培養を行った症例は42例で,多核白血球浸潤陽性例20例(内15例は細菌培養陽性),多核白血球浸潤陰性は11例で内培養陽性例は3例でいずれも膣常在菌であるLactobacillus sp.であった。 アンケート調査によると,毎日の入浴は向回答の3人以外全てで,ウオシュレット使用は時々を含め5人のみであったがいずれの人も細菌培養陽性であった。妊娠後性交渉を持つ人は14人で8人は一般細菌陽性で,持たないと答えた12人の内4人に細菌培養陽性であった。 常在菌以外の細菌(E.coliなど)が多数(30CFU以上/0.2ml of 20%suspenshon)培養された症例は42例中11例で,8例は脱落膜に多核白血球浸潤を示し(2例は脱落膜なし)上行性感染による影響の可能性を示していると考えられた。なお,アンケートを含めた28症例に関しては、組織でのグラム染色と培養が相関せず遺残物の採取に際しての混入や掻爬までの時間があるための感染等を考慮する必要があると思われた。
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