研究概要 |
保健・福祉サービスを促進する上で,日本人に特有な規範意識である世間体がサービス利用を阻害する要因となっているのではないかと考え,介護者を対象に調査を行い,サービス利用への影響と介護負担感との関連性について検討した. 世間体をどれほど意識するのかを測定するための17項目からなる世間体スケールを作成した.因子分析により,因子構造を確認し,世間体の概念に適合した構造であることが確認された.スケールの信頼性については,Cronbachのα信頼性係数が0.88と適度な内的整合性が得られた. 1. 調査地域を人口構成,産業構造,家族形態などから農村型地域と都市型地域に区別し,地域ごとに世間体と属性の関係を検討した. その結果,年齢では,農村型地域で有意差がみられ,高齢になるほど世間体得点が高く,都市型地域では,有意差はみられなかった.性別では,男性の方が有意に高い傾向がみられた.世帯類型は,都市型地域で夫婦世帯の方が有意に世間体得点高かった.生育地は,各地域とも農村部が有意に高かった.続柄は,都市では配偶者の方が高かった. 2. 世間体とサービス利用の抵抗感との関係については,農村と都市とで,抵抗感を感じる程度に有意差はなかったが,農村の一部で関連性がみられた.このことから,直系家族規範を前提とした農村型地域では,老親介護が定着しており,規範への同調意識が強いためにサービス利用に抵抗を感じる傾向があると考えられる. 3. 世間体と介護負担感との関係については,農村では関連性がみられが都市型では関連性はみられず,地域により違いがみられた. 以上より,サービス利用と介護負担感に介護者の世間体が関連していることが明らかとなり,地域の規範および介護者の規範意識を理解した上で,その地域に応じたシステムの整備・拡充が重要であることが示唆された.
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