研究概要 |
[目的]われわれはこれまで,看護教育や臨床実習指導に従事している看護教育従事者の対人関係価値を調査することで,看護教育従事者が看護学生にモデルとして提供するナ-ス像を捉えようとした。しかし,このナ-ス像が看護学生に対して影響を与えていることを実証するには,このナ-ス像が看護学生によって確かにそのように認知されていることが,まず明らかにされなければならない。本研究では,入学後半年を経過した看護学生と卒業直前の看護学生のそれぞれの対人関係価値を,自己像と彼らが認知した看護教育従事者の対人関係価値(推定値)の両面から調査し,この両面間の違いを学生の推移との関連で検討しようとした。 [方法]岡山大学医療短大部の1年生76名と3年生70名を対象に,対人関係価値尺度(KG-SIV)を2回実施した。1回目は自分自身の観点から評定する「自己像評定」,2回目は看護教育従事者がKG-SIVを評定するとすればどのように評定すると思われるかを推定する「推定評定」であった。 [結果と考察]1.看護関連情報との接触が多いと考えられる3年生群の推定値の方が,1年生群のそれに比べて看護教育従事者の実際値に類似すると予測されたが,この予測は支持されず,接触度と看護教育従事者の対人関係価値の取り入れの程度の関係は単純な一次的関係にはなかった。2.看護教育従事者の実際値と看護学生の自己評定値を比較した永田ら(1994)では,看護教育従事者は,現在の看護学生に「支持」や「承認」,「独立」の3価値領域では自制を求める一方で,「同調」や「指導」では逆に増強を求めていた。今回の推定値による検討においてもこれと同様の結果が得られたが,特に「支持」,「独立」,「指導」の3領域では全く同一の傾向が生じていることを確認した。
|