研究概要 |
本研究の課題『祖母の子育て参加が家族の育児機能と母親および祖母の心理的健康に及ぼす影響』について3つの調査を行い検討した. 1. 祖母の子育て参加が祖母自身の心理的健康に及ぼす影響 3〜5歳の幼児の母親と祖母に対して質問紙調査を行い,有効回答の揃った祖母と母親528組(42.3%)を分析の対象とした.心理的健康にポジティブに影響していた因子では,健康と感じている,日常活動に自立している,子どもの世話が好き,配偶者がある,孫の家族と同世帯,幼児の世話の経験がある,子育てに疲れを感じていない,母親との育児方針の相違がない,社会・文化的な子育て参加が多いなどであった.これらの要因が否定的な場合は心理的健康にネガティブに影響していた. 2. 祖母の子育て参加が母親に及ぼす影響 幼児の祖母と母親に対して子どもが3歳時と5歳時に縦断的に質問紙調査を行い,97組(53.9%)について分析した. 祖母の子育て参加の内容は,孫との遊びやしつけを中心とした関わりと,相談や助言などの母親への支援が主であった.祖母が子育て参加を楽しいと感じている者は約9割であったが,母親の育児方針との相違や戸惑いを感じる者も約5割にみられた.一方,母親側からの分析では,育児不安を持つ母親では祖母が母親との育児方針の違いに戸惑いを感じている者が多く認められた.母親は祖母からの子育て支援について子どもが3〜5歳である現在より乳児期にあったほうが多く受けたとし,子育て支援が多いほど満足感を感じていた. 3. 父親の役割が母性の発達・家族の育児機能に及ぼす影響 乳児の母親と父親に対して子どもが生後1か月時と12か月時に縦断的に質問紙調査を行い,425組(73.0%)について分析した.母性意識の向上に関連していたのは母親自身の自己価値観が高い,夫婦関係が良い,父親の情緒的支援が多い,父性意識が高いなどであった. 4. まとめ これらのことから祖母の子育て参加は母性の発達および祖母自身の心理的健康と家族の育児機能を高めることに影響しており,父親の役割に加えて重要と考えられた.
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