研究概要 |
第二次世界大戦期の科学技術動員の中心的組織の一つであった技術院に関する分析は,初代総裁の井上匡四郎文書の検討によって行った.今回は,科学技術動員計画について詳しく分析し,これまでに明らかになっていた基礎研究の比率の高さが,申請件数(55%)だけでなく経費(49%)についても追跡された.この事実は,技術院における科学技術動員が本来の動員とともに,科学技術の振興を底辺に持つものであったとする前回の結論を裏付けるとともに,わが国における第二次世界大戦中の科学技術動員が,連合国の中に見られたプロジェクト型でなかった事実を象徴している. また,文部省の科学研究費については,GHQ試料に基づいて分析を行い,これについても基礎研究の比率が高く,科学振興的な性格を有していたことを明らかにした.この分析は,現在も継続中である. 今回は,上の成果に加え,第二次世界大戦中に開発されたレーダー(電探)の実物について調査することができ,その形式などについてGHQ試料などを基に特定化を行った. 「海軍文書」の検討は,先方の都合から,十分果たせずに終わったが,資料の公開の要請を引き続き行う予定である.
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