【目的】小学校1〜6年、中学1〜3年、高校1年〜3年の各学年で習得すべき運動課題(運動技能)の獲得状況を明らかにすることによって各学年の発達基準を作成し、運動発達遅滞児の早期発見と診断法を開発することが目的であった。 【方法】対象者は小学生、中学生、高校生および大学生であり、合計2159名であった。 器械、陸上、水泳、球技、格技(中学以上)の各運動について、小学校低学年では53種類、同中学年では86種類、同高学年では102種類、中学校以上では185種類の運動イラストを作成し、それぞれのできぐあいを3〜5段階で生徒の自己評価により判定を求めた。 【結果】テストーリテストによる信頼性、G-P分析、通過率の検討を行い、最終的に小学校低学年では53種類、同中学年では57種類、同高学年では69種類、中学生以上では95種類(男子)または44種類(女子)の運動種目が選定された。これにもとづいて小学校低学年、同中学年、同高学年、中学校、高校及び大学別に合計得点、運動領域別得点について5段階の判定基準が作成された。これによって運動技能の獲得に遅滞をおこしているかどうかは、第1に合計得点で段階1または2に相当するかどうかを判定し、次に運動領域別に見て、どんな運動に遅滞をおこしているかを判定する。以上でおおよその遅滞傾向が判断されるが、さらに遅滞の内容を具体的に知るには、ひとつ一つの運動技能の通過率を手がかりに段階1または2の運動を見ていく。これを体育指導の事前に行えば運動遅滞児(者)の早期発見に有効となろう。またこの判定法は運動イラストによっているため生徒にわかりやすく、回答に要する時間も5〜20分程度であることから、体育の授業を進める上で活用しやすく、運動遅滞以外の生徒の個別の運動発達状況を把握する上でも有効であると考えられる。
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