研究概要 |
実験 I 除脳ネコの自由床歩行開始時における心臓血管系の応答について検討した.除脳手術から回復したネコは,床に座らせることによって体重を支え四肢歩行を開始するようになる.前肢三頭筋筋放電開始をオンセットとすると,それ開始以前から有意な心拍数の上昇がみられた.また動脈血圧はオンセットと同期して上昇した.このような筋収縮開始に先行した心拍数の増加,あるいは同期した血圧増加は,圧受容器反射切除術後にも同様に出現することも示された.また意識下動物の随意運動時における先行研究における結果とも一致していた.これら結果から,随意動作開始時には大脳皮質がなくても動作にカップルした機構が働き,循環応答が制御されていることが明らかとなった. 実験 II 運動負荷の急激な変化に対する循環応答について検討することを目的に,一定負荷の自転車駆動から急激に負荷が上昇する場合(Up)と同じく一定負荷の自転車駆動から急激に負荷が低下する場合(DOWN)の2条件を設定し,各条件において,筋にかかる急激な機械的刺激を予め準備している場合と全く準備していない場合について,負荷変化に対する循環応答の相違について調べた.その結果,負荷変化前についてみると,UP条件もDOWN条件も、負荷に関する教示がある場合には,教示のない場合に比べ,負可変化前30秒におけるHRとMAPが上昇した.このようなHRとMAPの増加量が教示内容に対応しているかどうかについてみると,必ずしも教示内容の相違が反映された応答とはいえなかった.荷変化直後におけるMAPの変化には,教示条件間の相違がみられていた.教示と実際の負荷が一致した場合には,負荷変化後の応答が速やかであった.一方,教示のない場合や逆の教示が与えられた場合には,負荷変化に対する応答が遅くなった.
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