本研究においては、古代およびオリンピック競技会を民族性の視点から分析することを目的として研究を行った。その結果、次のことが明らかになった。 1.古代オリンピックは、汎ギリシャ的な祭典ではあったが、競技者についてはそれ以上に、出身のポリス市民としての枠組みが先行していた。つまり、ポリス市民という民族意識が、汎ギリシャ的祭典において競技的に発散されたと言える。 2.近代オリンピック以前に行われた近代ギリシャのオリンピック競技会は、国家的かつ民族的な祭典であったと言える。近代オリンピックは、国際博覧会との共催に見られるように、民族性を排して国際的な競技会を目指したが、国際性を前面に出した競技会は成功しなかった。民族的な祭典の色彩が強くなるにつれて、近代オリンピックは国際的な広がりを持つようになっていった。結局、民族性をエネルギーとして、近代オリンピックは発展したと言える。特に第一回近代オリンピックは、ギリシャで行われたため、民族性と国際性とが衝突した競技会であったと言える。 今後の課題としては、民族性や国際性などを包含したオリンピック競技会を「祝祭」というより広い枠組みで分析する必要があると思われる。
|