研究概要 |
中高年者の長期間、習慣的な運動実施が成人病危険因子、骨粗しょう症および体温調節能に及ぼす影響を検討したところ、次のような結果が得られた。 1. 中高年者の習慣的な運動実施の影響を検討するため、長期間,習慣的に運動を実施している運動習慣者75名と非運動者301名の比較を行った。運動習慣者は非運動者に比べ総コレステロール,中性脂肪,動脈硬化指数の値は低く、筋力,柔軟性,敏捷性の機能は高かった。さらに、運動習慣群は非運動群に比べ,運動時の体温上昇度は低く,体重減少率は僅かに大きい傾向にあった。これは運動習慣群が体温調節上優れている可能性を示唆している。 2. 中高年女性214名を対象に運動強度50%HRmax程度のウォーキング運動を100日間,1日に20分間以上,週3日間以上実施した際の生理的な効果について検討した。ウォーキングの実施により総コレステロール,中性脂肪,動脈硬化指数の低下、筋力,柔軟性,平衡機能,敏捷性,持久性の機能の向上が認められた.この血清脂質の改善はウォーキングの習慣化により虚血性心疾患や動脈硬化等の心血管系の疾患の予防に寄与することを示唆している。 3. 35〜59歳の女性415名を対象に低周波超音波法を用いて骨塩量、骨質の測定を行い、運動習慣や運動歴、さらに体力水準との関係について検討した。骨塩量や骨質は日常生活での運動実施群と非実施群の間に差は認められなかったが、過去に運動経験のある群は運動経験のない群のそれに比べて優れた値を示した。また、体力値と骨量と間に有意な相関関係が認められた。運動の習慣化は骨量の減少を抑制し、骨粗鬆症予防として重要であることを示唆している。 これらのことより,比較的軽い運動であっても習慣化することにより,中高年者にとって成人病予防としての効果は十分期待でき,運動の習慣化は運動条件の中でも重要な要素であると考えられる.
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