研究概要 |
本研究は、長野オリンピックにおけるボランティア組織をスポーツ経営学的視点から追究することで、長野オリンピック経営の全体構造の中でボランティア組織の位置づけと役割を明らかにするとともに、生活者としてボランティア活動に参加することが生涯学習(生涯スポーツ)社会における社会参加・人格形成・自己実現とどのような関係にあり、ボランティア活動に参加するスタッフの生活の充実にどのような影響を及ぼすのかを追究することを目的とするものであった。長野オリンピック組織委員会(NAOC)への面接調査と参考資料から、ボランティア活動は「多くの県民や国民が祭典に集う喜びを実感するためのもの」と捉えられた。 主課題であるボランティア活動が生活の充実に及ぼす影響を明らかにするには活動への期待と充足の関係を正確に捉える必要があった。そこで、ボランティア活動前後2回にわたって調査をする手法を用いることで活動前の期待と活動後の充足の関係を捉えることにした。調査は、平成9年12月〜平成10年1月(第1次調査)と平成10年3月〜4月(第2次調査)に実施された。 第1次調査と第2次調査を集計し、導かれた結果から以下のような知見を得ることができた。 1. ボランティアの期待は、応募時の期待と活動直前の期待とでは若干の相違がみられた。 主成分分析の結果、ボランティアの期待は、「社会貢献」,「スポーツイベント」,「生涯学習」,「仲間づくり」,「スタッフ特典」, 自己活用」の6因子に精選することができた。 2. 活動直前の期待は多くの項目で充足されていた。しかし、選手との関係では充足されないものもみられた。 3. 約50%のボランティアは希望の業務に配属されなかった。しかし、行った業務には良い評価を示していた。 4. ボランティアの満足度は高い値を示しており、80%のボランティアが満足を感じていた。 5. 生活の充実に対しては、活動前の評価よりも活動後の評価の方が高い値を示していた。
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