研究概要 |
本研究では,血中乳酸濃度を指標とした有酸素能力評価方法の実用化のためには,評価方法の効率化が重要であると考え,(1)効率化の視点からの,Costillらが提案している「単一固定設定強度での運動負荷テスト終了時の血中乳酸濃度測定」の妥当性に関する生理学的検討,(2)血中乳酸濃度を指標とした有酸素的能力評価の効率的な実施方法の具体的な提案を行うことを目的とした. 主要な結果は次のとおりである:1.数種類の運動負荷強度による単一固定設定強度での運動負荷テストにおいて血中乳酸濃度測定および血液ガス測定を同時に実施し検討を加えた結果,「単一固定設定強度での運動負荷テストでの血中乳酸濃度測定による有酸素的能力の評価」のための負荷の設定強度として,原則的に,漸増負荷テスト(3分ごとの負荷漸増)によって得られる乳酸濃度の急激な増加が開始する強度(乳酸濃度3mmol/l)相当の強度あるいはpHの急激な低下が開始する強度(pH7.35)を目安とすることが妥当であると考えられた.2.ハイレベルの大学生サッカー選手を対象とした単一固定設定強度での運動負荷テスト「ランニングスピード15Km/h・6分間テスト(ウォーミングアップ10Km/h・6分間)」を考案し,被検者20名を対象に6月と12月に実施した.この運動負荷テストは,3台のトレッドミルを用い,「採血および乳酸濃度測定を1名の検者で行うという前提で,複数の運動負荷機器を用い,複数の被験者に対し,時差スタートで同時平行的に実施する運動負荷テスト方法」をキ-コンセプトとしたものであった.運動終了時の乳酸濃度は2mmol/l-8mmom/lの範囲であり,また20名の測定を約2時間で終了することができた.このような効率化の可能な単一固定設定強度での運動負荷テスト方法によっても,漸増負荷テストの場合と同様に,有酸素的能力に関する選手間の比較あるいは個々の選手のトレーニング状態の変化の把握が可能であることが確認された.
|