研究概要 |
本研究は,最近の欧米諸国の地理学研究において顕著にみられる新しい地誌学の研究動向を明らかにすることを目的としたものである。それは,森川がセンター長を努める広島大学総合地誌研究資料センターにおいても「地誌学はいかにあるべきか」が今日とくに重要課題をなしているところから,平成9年度にセンター助手を務めた作野と森川とが共同して,この問題に取り組もうと企図したことによる。しかし,新しい地誌学の進展には各国ごとにそれぞれかなりの差異があり,すべてが同じ速度でもって同一の方向に向かっているわけではない。したがって,欧米諸国の地誌学の研究動向を明らかにするためには,主要諸国の動向を個別に検討する必要がある。森川は,1996年度には実用性が強いドイツの地誌学の研究動向を検討し,1997年度にはイギリスを中心として英語圏諸国において1980年代に再興された新しい地誌学の動向を検討したが,主要国の1つに数えられるフランスについては手つかずの状況にあり,今後の研究が残されている。一方,作野は今年度伝統的地誌学と新しい地誌学の中心的概念の差異について研究を行い,ある程度の成果をえた。作野はオランダ地理学動向に関心をもっており,今後研究を進める予定である。以上のように,森川・作野の研究はなお研究途中ではあるが,ある程度の成果を収めており,従来わが国では検討されなかった問題に若干の貢献しうるものと考える。
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