研究概要 |
本研究は、ボツワナのサン・カラハリ族、ナイジェリアのフラニ族、ケニアのソマリ族の三つの牧畜社会を対象にして、1980年代の定住化政策に対する社会経済的対応の地域的差異とその要因を明らかにするものである。その結果、ひずれの社会においても、中心集落を拠点にして放牧集団のみが遊動する半定住生活に移行していることが明らかになった。しかし,家畜の商品的価値は、その需要地である都市との距離で異なってくるので,都市に近接して居住するフラニとソマリで盛んな乳や乳製品の販売は、サン・カラハリではみられなかった。その一方で,自らが所有する家畜を他の集団の群れにあずける関係は、サン・カラハリのみに発達していた。つまり、家畜の商品化と家畜をめぐる社会的ネットワークの希薄化には相関関係があると考えられる。しかし,フラニとソマリでも,都市居住者が家畜を所有して村で飼養させる企業家的側面のみられる所もある。
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