研究概要 |
ヒマラヤ地域および中部日本の埋没土壌層,埋没木炭片について,^<14>C年代測定,土壌学的分析,花粉・植物珪酸体の分析,火山灰との層位関係の認定をおこなった. ネパールの高山帯(ペリチェ,4550m),亜高山帯(シャンボチェ,3900m;ナムチェ,3550m),山地帯(ファブルー,2500m)で完新世の埋没土壌の土壌学的分析をおこない腐植型の区分をおこなった.その結果,いずれの場所でも腐植酸はA型であった.A型の腐植酸はイネ科の草本から供給されると考えられており,草原植生が存在していたことが明らかになった.ペリチェの埋没土壌は黒色ではなく褐色であり,褐色の腐植土も草本植生を示すことが明らかになった.ナムチェでは,これまで推定されているだけであった森林→草原→森林という植生変化が証拠づけられた.ファブルーでは,埋没土の花粉分析と植物珪酸体の分析もおこない,当時の植生は密な照葉樹林であるとの結果が得られた.いっぽう,腐植酸の分析からは,草原植生が存在していたことが明らかになった.埋没土壌層の年代,含まれている木炭片などから森林火災とその後の草原化が明確になり,このことは人為的関与(森林火災,耕地化など)があったことを強く肯定するものである. 中部日本では新潟地域,北関東,長野地域で,更新世の埋没土壌(腐植)で試料を採取し,植物珪酸体の分析から、最終氷期中の草原植生の証拠を発見した. 結果とその意義 1)古土壌の形成環境を明らかにするためには複数の方法を用いて総合的に分析しなければならないが,腐植のタイプの認定と植物珪酸体の分析が有効である. 2)火災の発生とその後の草地化は,人為的影響がつよかったことを明確にした. 3)埋没土壌による環境復原研究の今後すすむべき方向性を示すことができた.
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