研究概要 |
本研究は,情報教育の目標の一つとして情報の科学的な理解を通してシステム的な思考力を高揚することと考え,そのカリキュラムを作成することを目的とした.システム的な思考力とは,具体的には自然現象を含む身の回りのいろいろな現象をコンピュータで処理できる形式にモデル化し予測することが中心となる.そこで本研究では,以下のことを行った. (1)高等学校における数理的課題のカリキュラム作成 高校数学や理科の知識を基礎に理解できるテーマとして下記のカリキュラムを検討した. ・波動と情報処理 ・CGと情報処理 ・ネットワーク ・符号と暗号 (2)高等学校における数理的課題を用いた授業の実践 研究協力者により上記のカリキュラムの具体的な実践として以下の2つの授業を行った. ・音と周期関数 ・ベクトルとCG 結果として,自然現象をモデル化して捉えそのモデル上で予測などを行うことができたことやシミュレーションツールによる体験が主体的な学習を促進することが示された.しかしながらそのような授業展開のためには教員の情報科学に対する能力・資質の向上とコンピュータツールの整備が課題であることが明らかになった. (3)コンピュータ領域における大学入試問題の分析 コンピュータ領域の数学の大学入試問題より,数学とコンピュータ領域のクロスする分野についてどのような認識がなされているのかを分析した.結果としては,数学分野の計算モデルの思考力を問うものが多く,数学に限定しているため自然現象を含む広い意味でのモデルを思考させるものではないことが示された. (4)情報分野における数理的課題の教員養成の検討 (2),(3)からその教員養成についての問題を検討した. (5)数理的課題を扱うための教材の流通についての検討 (1)からシミュレーションツールなどの教材の流通について考察し,米国でのEOEデータベースを移植し,サーバ機を持たないような学校を含めた分散データベースの構築を検討した.
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