研究概要 |
本研究は,書字発達の初期段階において学習に困難を示す児童・生徒を対象にして,学習におけるつまずきの原因の解明とその学習を促すための指導方法の検討を行うことを目的とした基礎的研究の一環として実施したものである。本研究期間では,書字そのものの学習に関する研究に加え,書字の前段階における表現活動に関する研究も実施した。すなわち,組織的,体系的な書字学習に入る以前の発達段階にある子どもを対象として,書字学習へと導入していくまでの積木遊びや描画などの表現活動に関する指導課題系列を提案した。また,書字そのものの学習に関する研究では,筆圧と筆記用具の持ち方に関する基礎データの収集を行い,その関連性を検討するとともに筆圧コントロールにおける教示の効果と視覚機能の役割について試行的な検討を行った。具体的には,小学1年生の児童4名を対象にして,筆圧コントロール機能の変化を中心にして,書字に関わる種々の機能の獲得過程について1年間に渡って追跡した。また,書字に関する組織的な一斉指導の経験を持たず習得が不完全であると推測される就学前の幼児を対象にして,筆圧コントロールにおける言語教示の有効性について実験的に検討した。さらに,筆圧コントロールにおける視覚機能の役割について検討するために.視覚障害児及び知的障害児を対象にして同様の実験を行った。今後,書字指導プログラムの開発をすすめるためには,筆圧,筆記用具の把握形態,視覚機能の状態などの資料を総合的に分析,検討していく必要がある。
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