研究概要 |
ラインポートボールを小学2,4,6年生,ならびに大学生に行わせ,ゴールマンの動き,フィールドプレーヤーのボール保持時間等の事象を分析し,状況判断力の発達過程を検討した。ボール保持時間は2〜4年生で,インターセプト数は4〜6年生での加齢的変化が顕著にみられ,“外的ゲーム状況に対する選択的注意"から“プレーの遂行"までの過程の状況判断の速さは2〜4年にかけて,正確性は4〜6年にかけての発達が著しいと推察された。また,“外的ゲーム状況に対する選択的注意"から“プレーに関する決定"までの過程の能力は,ゴールマンの動きや状況判断能力テストの成績から加齢的に成人まで穏やかに発達していくと考えられた。 また,多点注視選択反応時間は,2〜4年にかけての発達が顕著で,刺激見落し回数は,児童期ではほぼ同値を示し,成人では有意な減少がみられ,多点を注視し素早く選択反応する能力は,成熟要因のみでは発達しないように推察された。 以上のことから,低学年児童では,状況判断能力に関わる基礎的能力が未発達で,攻防相乱型ゲームを行う上でのレディネスが低いと考えられた。 そこで,小学3〜6年性の8学級を対象に,ラインポートボールとバスケットの授業を実施し,単元中の3回のゲーム事象の分析の観点と指導者の主観的評価によって状況判断能力を把握した。あわせて,「よい授業への到達度調査」の記述内容,ならびに学習ノートの作戦の深まりから状況判断能力の向上を評価した。 これら学習成果のゲーム様式による相違や学年差を検討した結果,3・4年生では,ラインポートボールではかなり正確に状況判断を出来るようになるが,バスケットボールでは困難性が認められた。さらに,いずれの学年においても,技能下位者や女子児童にとっては,ラインポートボールの方が状況を判断しやすいことが認められた。 以上のことから,ゲーム状況の予測の過程の能力を伸長させるのは中学年以降が適切であると考えられ,中学年では「過渡的攻防相乱ゲーム」,高学年ではゲーム人数を減少させた「攻防相乱型ゲーム」教材での学習がふさわしいと考えられた。
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