本研究は、地球的民主主義の確立を志向し、地球市民社会に生きるとともに、地球市民社会を創造していく地球市民の育成を目指す社会科の授業理論を構築するとともに、授業実践と直結する社会科の学習プログラムとそれに位置づく一連の教材を開発・作成し、そのモデルを提示したものである。 本研究実績の概要は、次の通りである。 1.社会科教育の基本的性格と地球市民の育成との関係を明確化し、地球市民の育成を目指す社会科教育の基底的理念である人間の尊厳の理念とは何かを明らかにした。(1996年9月社会科教育学会全国研究大会で発表) 2.地球市民育成の歴史的・社会的背景として引き合いに出されてくる「相互依存関係」を、「ある関係」(現実の視点)と「あるべき関係」(未来への視点)と「あらねばならない関係」(未来からの視点)から捉え直し、「相互依存関係」をより発展的に「社会的共存・共生関係」として社会を創造していかなければならないということを明らかにした。 3.地球市民育成の中核的な能力である「グローバルな見方・考え方」の捉え方を明確に定義するとともに、「グローバルな感じ方・行い方」との統一的育成の重要性を指摘し、その方途を明らかにした。 4.地球市民を育成するという視角から、これまでの社会科教育の目標・内容・方法・評価などを全般にわたって見直し、捉え直すことによって、地球市民を育成するための社会科の授業理論を構築した。 5.地球市民育成のための社会科授業理論を踏まえて、中学校社会科の学習プログラムとそれに位置づく一連の教材を開発・作成し、そのモデルを提示した。(2・3・4・5の成果は『科学研究報告書』に掲載)
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