研究概要 |
1. 頑健性を向上するオブジェクト同定法 ユースケース制御パターン(境界,制御,実体という3種類のオブジェクトから構成されるパターン)を用いてモデル化することにより頑健性に優れたシステムを構築できるとのIvar Jacobsonの仮説を判定するための実験を実施した。実在する交通情報システムの複数の版の仕様書を対象とする。まず初版の仕様書をベースにユースケース制御パターンに基づく方式で分析・設計を行い,ついでその設計に対して次版以降における改造を次々と適用し,改造による影響範囲の大きさを測定した。これまでに第3版まで実験を終えた。その結果,ユースケース制御パターンにより頑健性が向上するのは制御オブジェクトに割り当てられるべきビジネスルールが存在する場合に限定されるとの見通しを得た。また,制御オブジェクトの役割は配下の実体,環境オブジェクトをある論理のもとに呼び出すこと,複数の実体オブジェクトに関係する規則(ビジネスルール)を取り扱うこと,およびトランザクションの具現化であることを明らかにした。 2. オブジェクト指向による実世界モデル化 オブジェクト指向による実世界モデル化には直接モデル化と間接モデル化の二つの形態があることを明らかにした。両形態におけるオブジェクト間の関連の識別方法を具体的に示した。オブジェクト指向方法論としてもつとも普及しているOMTはこの点を理解せず構築されているためいくつかの欠陥を生じていることを明らかにした。
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