研究概要 |
本研究では,画像認識の基礎となる領域分割についてアルゴリズム理論の立場から考察を行った.すなわち,様々な数学的基準に対して,その基準における最適解を求める問題がどの程度の計算手間を必要とするかを解析し,さらに多項式時間のアルゴリズムを得るためにはどのような制約条件を付加する必要があるかを考察した.特に,判別分析の基準に基づいて,画像を連結な2つの部分に最適な形で分割する多項式時間のアルゴリズムを得ることに成功した.様々な種類の画像に適用した結果,かなり安定な分割を得ることができたので,所期の目的を達成できたものと思われる.このアルゴリズムの基本的な道具は動的計画法であるが,申請者が現在専門にしている計算幾何学における技法,特に,ハンドプロービングとパラメトリック探索法がが高速化に威力を発揮した. 従来の領域分割の方法は、人間の直観に基づいた曖昧な基準に基づく発見的法が多く見受けられ、性能が対象画像によって大きく異なった.また,経験的知識に頼り過ぎるために多数の例外処理を含む複雑な方法になってしまうことが多かった.本研究で提案した方法は、既に実績のある判別分析法に基づいており、しかも計算幾何学で開発されたアルゴリズム設計技法に則っているのが特筆すべき点である。 本研究での成果は,ギリシャ,ドイツおよび米国における国際会議と,応用数理学会などで発表し,アルゴリズム理論家から高い評価を受けた.今後は更に多くの画像で実験を行うことにより,実用的側面からの検討を強化していきたいと考えている.
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