研究概要 |
本研究では,カメラの視線方向やズ-ムを変更しても,視点の位置が移動しない光学中心不変カメラを用いて,能動的に視線方向やズ-ムを変更して対象の検出・追跡を行うシステムを構成した. 平成8年度は,1.基本アルゴリズムの開発,2.光学中心不変カメラの実現法の考案,および,3.カメラキャリブレーション法と4.対象の検出・追跡システムの試作について研究を行った.まず,光学中心不変カメラの視線方向・ズ-ムを変更して撮影した数枚の画像から,超広角の画像を合成し,その画像から任意の視線方向・ズ-ムの画像を高速に生成する基本アルゴリズムの開発を行った.さらに,任意のカメラを雲台の回転軸上に光学中心が乗るように取りつける,光学中心不変カメラの実現法,光学中心不変カメラを用いて,焦点距離やレンズ歪み係数等のカメラの内部パラメータを求める,カメラキャリブレーション法,のそれぞれを明らかにした.以上の結果から,超広角画像から任意の視線方向の画像を生成することができ,それを背景画像として用いることにより,視線方向を変えて撮影した画像に対しても背景差分による対象検出が行える.この方法を用いて,検出対象が常に画像の中心に位置するようにカメラの視線方向を変更する対象の検出・追跡システムを試作した. 平成9年度は,前年度作成した,対象検出・追跡システムを拡張し,5.視線方向の変更に加えてズ-ムを変更可能にするとともに,6.対象の速い動きにも追従することができる実時間システムを構成した.ズ-ムの変更に関しては,前年度開発したカメラキャリブレーション法と画像生成法を拡張し,拡張された画像生成モジュールを,対象検出・追跡システムに組み込み,視線方向とズ-ムを同時に変更しながら対象の検出と追跡を行うシステムを構成した.実時間システムへの拡張では,対象の運動に対してシステムが遅れて動作するという問題を克服するため,対象の運動と,カメラアクションの完了に要する時間の両者を推定し,次の撮影時刻に対象が存在する方向に視線方向を向けるシステムを構成し,比較実験により,従来法よりもシステムの追従性,安定性が飛躍的に向上することを明らかにした.
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