研究概要 |
ユーザの質問に応じてネットワークから取り出された多量の文献を一種の電子図書館と見立て,その中を文献相互の関連を確認しながら,望む情報を探し出せる検索システムを構築した.その際,1:自然な形での質問を受けつけられる,2:文献間の関連性を空間的に表現できる,3:中を散策できる,ことに重点を置いた. 1については,自然言語での質問に対しLangLabによる簡単な構文解析を行ってキーフレーズを抽出した後,不適格文の処理のため,不要語を除いて扱うようにした.文献(表題とアブストラクト)も質問と同様に扱った.意味の扱いは文献間の関連性を測る処理で吸収するようにした. 2については,キーフレーズの形の質問と文献間の関連性を類似度行列で表し,これをもとにそれらの空間的配置を求めた.類似度の計算には,似た意味の語は綴りも似ていると考え,これを反映できる構造マッチング法を定式化して使った.空間配置には,類似度行列を推移行列に変換して1次元配置を求める簡単な方法と,類似度行列に見合う距離行列を作り出す3次元配置を,遺伝的アルゴリズムを用いて求める方法を定式化した. 3については,グラフィックスライブラリOpenGLの関数を使ってXウィンドウ上に仮想的なマンセル色空間を作り,中に質問や文献を球体の形で配置して実現した.この仮想空間が質問ごとの(小規模な)電子図書館となる.準備したナビゲーション機能を使ってユーザは中を自由にブラウジングできる.空間全体には色の傾斜が掛かっており,ユーザはブラウジングの履歴を記憶せずに済ませられる.システムの実用性を確かめるため,工学部発行の研究報告5年分を電子図書館と見立て,WWWブラウザを通じた検索が可能となる環境を作った.現段階では,1次元配置での散策しかできないが,3次元配置についてはJavaを使って実現に取り組んでいる.
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