研究概要 |
データベース・システムにおいて多くの情報を記憶しているファイルに何らかの障害が発生したときには記憶されている情報が消滅し,その回復(リカバリ)に時間がかかる場合が多い.その場合利用者に多大の迷惑をかけることになるのでファイルに障害が発生したときのファイル回復技術が多く考えられている.ファイル回復技術には障害の発生前後でファイル回復のための事前処理と事後処理がある. 本研究ではデータベース・システムにおけるファイル障害発生時のファイル回復のための事後処理の支援処理である事前処理の内,特にチェックポイント・ロールバック・リカバリ方策を取扱った.この方策の概略は,システム障害が発生し主記憶装置の情報が消滅したとき,ジョブを最初からやり直すのでなく補助記憶装置に存在する,直前のチェックポイントと呼ばれるある前もって定められた時点において記憶された情報および直前のチェックポイントからの監査証跡を使用してシステム障害直前の状態に復帰(ロールバック・リカバリ)する方策である. 一般に,チェックポイントで情報を記憶することをチェックポインティングと呼ぶ.そのとき問題となるのはチェックポイント列をどのように決定するかということであり,時間・費用のトレードオフを考えたチェックポイント・ロールバック・リカバリ方策を求めることが必要となる. 以上のような観点から本研究ではチェックポイント・ロールバック・リカバリ方策が実際に使用される場合に,使用されやすいように環境に適合したモデルを提案し,解析的・数値的に最適方策を求め,ソフトウェア・パッケージを著者らが提案したモデル,その解析的・数値的に求められた最適方策を基礎にして作成した.この研究成果により今まで概して熟練者の感と経験によってなされてきたチェックポイント時機の決定が誰にでも環境に適合した状態ですぐにできる.このことはリスク・マネジメントの観点からも非常に重要である.
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