研究概要 |
東北大学理学部地震予知・噴火予知観測センターの高感度微小地震観測網の地震波形記録の中から,sP波(震源から上方に射出されたS波が,海底面でP波に変換されて反射した後,観測点まで到達した位相)を見いだした.このsP波と震源からの直達P波との走時差は,地震の震源位置によって顕著に変化する.したがって,この走時差を利用する事により,観測網の外側に発生した地震についても高精度の震源決定が可能となった.震源決定の際の理論走時の計算には3次元地震波線追跡法を用いて,海底における地震波速度構造の不均質性を可能な限り考慮した. 今回は東北地方太平洋側の海底に発生した地震について調査した結果,日本海溝から沈み込む太平洋プレートの形状について新たな知見が得られた.すなわち,東北日本弧の太平洋ペレートは日本海溝から西側に約150kmまでは非常に低角度(10度未満)で沈み込んでおり,それより西側では徐々に沈み込む角度が大きくなっている. 平成7年には釜石市沖に東京大学との共同研究で光ケーブル式海底地震計が設置され,海底下で発生する地震の震源決定精度が飛躍的に向上しつつある.暫定的に求められた震源位置は,sP波を用いた震源位置とよく一致しており,今回の研究結果の有意性が確認されたと考える. これらの高精度地震決定による結果を基にして,地震のメカニズム解を決定する方法を開発中である.従来は,P波初動の押し引き分布のみを用いていたが,今回はP波とS波の振幅比をも併用してメカニズム解を求めている.地震波の入射角による振幅比の補正や,地表の影響の補正など検討課題はまだ残っているが,陸域の地震についてはすでにその有効性を検討済みであるため,今後は,広帯域地震計による波形解析と併用して,プレート間地震の発生機構を解明し,太平洋プレート内部の起震応力の分布の推定をめざす.
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