研究概要 |
(1)セラミックス中の水素溶解度の測定 セラミックス中の微量の溶解(放出)水素を定量するための装置を新たに設計・製作した.これを用いて,重水素を溶解させたZrO_2-8mol%Y_2O_3単結晶(溶解条件:100kPa,1773K,3h)を真空中で等時焼鈍して,重水素の放出量を温度(時間)の関数として測定した.得られた放出曲線は1400K付近にピークを示したが,このピークはかなり鋭く,放出が拡散律速であるとするモデルでは説明できない.また,放出されたDの総量は,金属原子(Zr+Y)の10^<-6>程度であり,純ZrO_2中の重水素の溶解量の文献値と比べると,1桁以上小さかった.ZrO_2-8mol%Y_2O_3中には多量のイットリウム(異種原子価陽イオン)および酸素空孔が存在するが,それにも関わらず水素溶解量が小さいということは,それらの欠陥と水素との相互作用があまりないということを示唆している. (2)ペロブスカイト酸化物プロトン伝導体の中性子回折 SrTi_<0.97>Sc_<0.03>O_<2.985>粉末試料およびこれを重水蒸気雰囲気で加熱して重水(素)を溶解させた試料について,中性子回折実験を行った.両者の回折ピーク強度の差(比)を,種々の重水素占有位置(O-O間,O-Sr間,O-O-O三角形の中心,O-Ti間など)を仮定して計算した構造因子の変化と比較検討した.単結晶を用いた中性子回折実験の結果からは,O-O間からわずかにずれた位置を水素が占めると結論されているが,このモデルを含めていずれのモデルでも,今回の結果を十分説明することはできていない.また,SrCe_<0.95>Yb_<0.05>O_<2.975>の粉末中性子回折を行い,結果をRietveld解析して構造パラメタを決定した.
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