本研究では、水の環境評価に対して^<17>ONMR測定の適用について検討するため、種々の測定を行い基礎データを得た。 1.河川水は近郊河川の9地点から採取し、pH、導電率、イオン濃度(Na^+、Ca^<2+>、Cl^-、NH_4^+)、溶存酸素量の測定を行った後、25℃で^<17>ONMRスペクトルを測定した。通常の測定と併せ^<17>Oと^1H核とのスカラー・スピン結合の効果を消去するためにプロトンデカップリング法(PD法)による測定を行った。通常の測定による酸素NMR線幅は、採取地点によって約75から120Hzまでかなりの相違がみられた。しかし、PD法では43から45Hzと誤差の範囲内で一定値を示した。従って、線幅の違いは主として水のプロトン交換に由来するスカラー・スピン結合の寄与の相違によることがわかった。 2.河川試料水の導電率、各イオン濃度、溶存酸素量と酸素NMR線幅の間にはあまり相関が見られなかったが、試料水が狭いpH範囲にあるにもかかわらず、pHと線幅の間には相関が見られた。この点について詳細に検討するためにpHを調整した水を用いて酸素NMRを測定した結果、pHが7付近で線幅は130Hzと最大になり、pHが7よりも小さくてもあるいは大きくてもピーク線幅は急激に小さくなることが示された。 3.市販の3種類のミネラルウオーターと蒸留水に種々の物理的処理(真空中で脱ガス、酸素ガスの飽和、沸騰後室温まで冷却、凍結後室温まで加温)を行い、処理前後の酸素NMR測定を行った。その結果pHが7よりも僅かに大きなミネラルウオーターではいずれの処理によってもピーク線幅の減少(数Hz〜70Hz)が観測され、このとき同時にpHも大きくなった。またpHが7よりも小さな蒸留水では線幅が増加したが、このときpHもより7に近づいた。従って、物理的処理による線幅変化も2.で示した水のpH変化に大きく依存することが示された。
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