研究概要 |
1.大船渡湾における沈降粒子フラックスの季節変動を実測した結果,全重量フラックス,全炭素,全窒素,全リンの含有量とフラックスの年平均値は各々12.5(g/m^2/d),10.2(%)と1300(mg/m^2/d),1.2(%)と150(mg/m^2/d),0.16(%)と19(mg/m^2/d)であった。フラックスは春期3月と夏期7〜9月に高く,冬期に低い傾向が顕著で,夏期のフラックスは春期の約2倍大きかった。これは実測したクロロフィルaが夏期表層で10(μg/L)以上を示したことから,夏期表層の大きな基礎生産速度が養殖マガキの摂食と排泄を通じて沈降粒子フラックスに反映したと考えられた。結果の一部は「大船渡湾におけるクロロフィル現存量と沈降粒子フラックスの平均的季節変動」と題して平成8年度日本水産学会秋季大会で口頭発表した。 2.マガキの排泄量について,既存モデルに基づき環境要因の実測時系列のデータを用いてシミュレーションした結果,上記した沈降粒子フラックスの絶対値と季節変動の特性を再現できることが明らかとなった。この結果は「大船渡湾における養殖マガキによる沈降粒子フラックスの推算」と題して平成9年度日本水産学会春季大会で口頭発表予定である。 3.沈降粒子の溶存酸素消費速度は10〜100(mg-O_2/m^2/d)程度で,季節変動はフラックスの季節変動に比べ不明瞭であった。これは沈降粒子の酸化分解が沈降中に極めて速やかに進行し採集時には易分解性有機物の割合が減少していたか,または穏やかに進行し沈降後の底泥としての酸素消費過程に反映されることを示唆した。底泥の酸素消費速度は200〜700(mg-O_2/m^2/d)程度で,水温に依存し夏期に極大となった。 4.大船渡湾底層の貧酸素化の過程を実測し,貧酸素層が発達しない他の湾と比較した。この結果の一部は「越喜来湾における栄養塩類の平均的季節変化と経年変化」と題し共著として日本水産学会誌に掲載予定(平成9年3月)である。
|