研究概要 |
小河川の流下過程の物質収支法での農薬減少量の定量と有機物質としての分解速度の評価を行った。調査対象河川は淀川支流の芥川上流部(1996年)の本川(2.5km)と農業水路(2.5km)および天野川中下流部(1997〜1998)の流下区間である。水田施用農薬を対象に6〜8月に3日に1度の定期水質負荷量調査を実施した。芥川の本川と分流された農業水路は河道状況に大きな相違が見られた。本川は釣り場として小石で河道を数多くの浅いプール状に区切られて流下時間が長くなって減少量が大きかったのに対して,三面コンクリート張りの農業水路は流下時間時間が短いためにほとんど減少がなかった。天野川は上中下流域最下端の3地点で調査したが,農薬の流出入のない中下流区間(1.2km)での物質収支で評価した。1997,1998年ともほぼ同じ農薬が検出された。1997年にはMEPの87%,ピロキロンの32%,エスプロカルブの3%,BPMCの1%減少が見られた。1998年にはピリブチルカルブの47%,IBPの43%,プレチラクロールの42%,シメトリン30%,エスプロカルブの20%,ピロキロン19%,BPMCの17%,ダイアジノンの5%減少が見られた。また,上下流地点での採水時刻のズレが流下時間分の遅れより短かったため,時々高濃度で検出される農薬では逆に6〜25%増加した例もあった。有機物質の流下過程での減少を1次反応で仮定し,総括的な自浄係数で評価したところ,20%以上の減少となる農薬は懸濁物質への吸着・沈澱や河床付着生物膜への蓄積の寄与に因ると考えられた。河床付着生物膜からは,芥川ではエスプロカルブ95ppb,メフェナセット47ppb,シメトリン・IBP・ブタクロール10ppb,ベンチオカープ3ppb,エチルチオメトン0.4ppbが,天野川からはエスプロカルブやIBPが5〜10ppbで検出され,河床付着生物膜や底質での農薬分解減少への寄与が示唆されたが,生態影響の考慮も必要である。
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