研究概要 |
これまでの研究者では,紫外線誘発アポトーシスは紫外線による膜損傷から誘導されるという知見が得られていた.光回復酵素遺伝子を過剰発現させたメダカ培養細胞OCP13を用いることにより,短時間(分単位)の可視光照射で,致死線量の紫外線により生成されたピリミジン二量体のみを,ほぼ完全に修復することに成功した. この細胞では紫外線照射後4時間で,アポトーシスに特徴的な決定変化やDNA断片化などが現れ,アポトーシスを観察しやすく,次の2点が明らかとなった.(1)紫外線誘発アポトーシスの過程は,DNA断片化が起こる直前までは可逆的である.(2)アポトーシスの主要因であるピリミジン二量体が修復されさえすれば,途中まで進行したアポトーシスカスケードから細胞は離脱できる. UVA,UV B,UVCが誘発するアポトーシスの違いを,比較した.UVA,UVB,UVCを照射した.UVB(50-800J/m^2)とUVC(10-30j/m^2)では,照射後4hrで均一に播種した細胞の配置は網目状に変化した.その後細胞と核の萎縮,核小体数の減少,アポ小体の形成などの形態変化が観察された.接着面から剥離した細胞からはDNA断片化が検出され,アポトーシスを起こしていることが明らかになった.一方,UVA(4 kJ-24 lJ/m^2)では,細胞と核の萎縮,核小体数の減少は起きたが,アポ小体の形成は観察されず,細胞の配置は均一なままだった.照射により萎縮した核は,UVBやUVCでは,いびつだったの対し,UVAでは丸かった.UVBとUVCは、細胞にアポトーシスに特徴的なカスパーゼ活性化が認められたがUVAでは、これが観察されなかった。 これらの結果よりUVAでは、細胞死の引き金となる損傷が、ピリミジン2量体でないばかりでなく、下流の情報伝達系も異なることが考えられた。
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