研究概要 |
アレルギー性気管支喘息発現に対するDiesel exhaust particles(DEP)の修飾効果について実験的検討はほとんど報告されていなかった。DEPの修飾効果の有無とそのメカニズムを明らかにするために、DEPのアレルゲンに関連する好酸球性、リンパ球性気道炎症におよぼす効果を検討した。特に、DEPがリンパ球の表面マカ-とサイトカイン産生に及ぼす影響を中心に検討を加えた。ICR系雄性マウスを用い、1)vehicle群,2)ovalbumin(OVA:アレルゲン)群,3)DEP群,4)OVA_+DEP併用群を設定し気管内投与を6週間行った。vehicle(0.1ml/body)とDEP(100μg/body)は1週毎に計7回、OVA(1μg/body)は3週毎に計3回投与し、最終投与の24時間後に種々の検討を行った。OVA、DEP単独群に比較しOVA_+DEP併用群では、好酸球性、リンパ球性気道炎症と粘液産生、アセチルコリンに対する気道過敏性、抗原特異的IgG1とIgE産生は顕著に増悪した。免疫組織学的には、OVA_+DEP併用群の浸潤リンパ球にはIL-5、CD4陽性の細胞が他群に比較し数多く認められた。気管支肺胞洗浄液と肺可溶性画分中のIL-5の蛋白発現は、OVA単独群でも軽度に観察されたが、OVA_+DEP併用群で顕著に増強していた。DEPの併用投与は、OVAによるリンパ球の浸潤やIL-5の産生を修飾することにより、好酸球性気道炎症を増悪することが推定される。今回の検討により、近年の大気中DEP濃度の上昇とアレルギー性気道疾患の増加と増悪の関連が実験的に示唆された。現在、大型チャンバーを用いてDiesel exhaust(DE)と吸入OVAを併用暴露する実験系で同様の検討を進めているが、DEの併用暴露は、アレルゲンの単独吸入に比較し好酸球性気道炎症とIL-5の局所発現を増悪する結果が得られつつある。
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