研究概要 |
本研究では,膜分離活性汚泥法において汚泥負荷を変化させた連続処理運転における生物処理性能の変化とエアレーションタンク内生物相の変化を検討し,さらにこれらの生物代謝反応で生成,蓄積する生物代謝産物濃度など,膜透過流束に影響を与える因子や膜面付着層の形成についての検討を行い,以下の知見が得られた。 I.膜分離活性汚泥法における有機負荷条件と生物処理性能の関係 (1)汚泥負荷を標準活性汚泥法の8倍にまで上昇させても99%以上の有機物除去性能が得られたが,膜透過流束は汚泥負荷が高くなると若干低下した。 II.異なる汚泥負荷条件下におけるバイオリアクター内での代謝成分の生成特性および蓄積特性 (1)低負荷条件の場合はSMP濃度の増加とともに透過流束は減少した。高負荷条件の場合,運転が長期化すると透過流束はほぼ一定となり,またSMP濃度とは相関性が見られなくなったが,この成分中の高分子有機物濃度が透過流束を支配していたためと考えられる。 III.膜面付着雄の形成に対するバイオリアクター内の汚泥性状,分散倍性質の影響 (1)汚泥混合液の上澄み液粘度を測定した結果,透過流束との間に負の相関性が見られたことから,粘度はより簡易な運転管理上特に重要な透過流束の予測指標として有効であると考えられる。 IV.膜面付着層形成と膜透過流束の関係 (1)低汚泥負荷の場合,付着層抵抗は主にゲル層抵抗で占められていたが,高汚泥負荷の場合はケーキ層抵抗が大きくなっていた。これより高汚泥負荷の場合は簡易な水洗浄で膜透過性能の回復が可能である。 (2)ケーキ層抵抗はゲル層抵抗に比べて単位付着物量あたりの抵抗が大きかった。またケーキ層はゲル層よりも密な構造になっていたことが,SEMによる観察の結果からも確認された。 V.高負荷膜分離活性汚泥法の設計・操作条件の確立 (1)汚泥負荷を標準活性汚泥法の倍程度に設定することで汚泥を常に高活性に保つと同時に引き抜きにより反応槽内に蓄積するSMPの希釈も行うことが可能である。透過流束は従来条件に対して若干低下するが,実質処理水量が倍になることからこの程度の低下は問題にはならない。
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