研究概要 |
本研究は,環境規制が企業の国際競争力に影響を及ぼしているのか否かを検証することを目的として開始された。 まず,日本企業がこれまでに投下してきた公害防止投資と運転費用を見積もることを試みた。残念ながら,個々の企業の公害防止投資額は企業秘密に属しており,個別データにあたることはできなかった。したがって,通産省,公害防止事業団(現・環境事業団)等がアンケートによって収集したマクロデータのみを使用しての解析に留まらざるをえなかった。その結果,エンド・オブ・パイプに関する投資の総投資額に対する比率の大企業の平均値は1.66%と推計された(中小企業では4.37%)。公害防止機器の年間運転費用と年間の売上との比も,大企業では0.1%未満にすぎなかった(中小企業では0.38〜1.71%)。したがって,少なくとも大企業では,公害防止投資の負担は競争力に影響を及ぼすほど大きな物ではないと考えられた。むしろ,労働コスト,立地する地域の社会経済的状況,市場へのアクセスなどの方が,企業の競争力に大きく影響すると考えられた。 ここで視点を転じ,開発途上国の環境保全に資するようなビジネスが育つにはどのようにしたらよいかについて検討した。ここでは経団連に属する日本企業にアンケート調査を実施し,企業の環境国際協力の実態把握と,このような協力活動を促進するためのメカニズムを探った。さらに,日本と開発途上国の企業間の協力によって進められている環境ビジネスの実際例をケーススタディした。
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