研究概要 |
チマキザサの生態 Dラインでは境界から20mの地点で草高が平均約80cmあり、50m付近で50cm、90m付近のチマキザサがあまり見られなくなる地点では30cmの草高になっていた。その関係は季節を通して大きな変化は無かった。シュート当たりの葉数の平均はどの地点でも大きな違いはなく5-7枚であった。葉の寿命はおよそ2年と観察された。シュート密度はラインの50m付近でやや大きく赤井谷地境界付近とチマキザサの分布緑の90m付近で小さくなった。6月はじめには当年のシュートが生じるために密度が大きくなったが、9月には一部の老齢化したシュートが枯死するため密度は低下した。 水質調査 湿原周囲にある水路の水質を分析した。pHは5.3〜6.75の範囲にあり比較的水路が深い場所で酸性側であった。溶存有機物炭素は電気伝導度とpHの比較的低いT6,7,9(泥炭の素堀水路)で高くなっていた。これは比較的深い場所からの泥炭からの腐植物質の溶出と思われるが、吸光度のスペクトルは尾瀬が原の池塘とは異なり300nm付近には吸収ピークは無かった。電気伝導度は周辺が水田である場所が高いので水田からの肥料の拡散・混入が予測され,湿原周囲のチマキザサの生育がよいことの理由の一つであろうと考えられた。 環境管理 周囲の水位が高い場合,湿原に肥料の流入が危惧され,周囲の水位が水路によって低下している場合には湿原からの地下水の漏水による周辺部での乾燥化が予測される。湿原を原生のまま保存するにはバッファーゾーンを設け,肥料の流入防止と湿原の乾燥防止の両面から考慮すべきであると結論される。
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