研究概要 |
Sxl蛋白質は,ショウジョウバエの性決定に重要な役割を果たしているRNA結合蛋白質である.本研究は,まず,Sxl蛋白質について,部位特異的な変異体を導入して,構造解析を行うのに十分な溶解度をもつ試料を作成した.これによりSxl蛋白質のRBD1が,特徴的なアミノ酸配置をもつ,RBDであることを明らかにした.つぎに,この変異体を用いて,UGU_7を結合配列として,X線結晶解析を行い,複合体の高次構造を決定した.これにより,認識配列が,二つのRNA結合ドメインにより挟まれ,協同的に一本鎖のRNA分子が認識される,機構を明らかにした.また,二つのRBDのうちRBD1は,従来知られていたRBDとは,異なるRNA分子の認識を行っていることが明らかになった.また,一本鎖のRNA分子の安定同位体標識法を確立し,NMR法による,解析から,水溶液中においても,Sxl蛋白質のRBD1-RBD2が,RNA分子を協同的に認識していることを明らかにした.さらに,Sxl蛋白質と類似しているHuC蛋白質のRNA結合ドメインについてもRNA分子の認識機構を明らかにし,結合配列であるAUUUAUUUを特異的に認識するメカニズムを明らかにした.Sxl蛋白質とHuC蛋白質を比較することにより,アデニン塩基を特異的に認識するメカニズムを明らかにした.さらに,U2AF蛋白質について,そのRBDの高次構造を決定し,このRBDが,従来知られているRBDとは,異なる立体構造を持ち,12残基程度からのある余分なループ構造をもつことを明らかにした.さらに,U2AFでは,二つのRBDにより,U_4C_2U_4という結合配列が,複合体を解析する上で適した結合配列であることを明らかにした.
|