研究概要 |
合計44コピーのニワトリヒストン遺伝子の中、39コピーは約110kbのクラスター内に存在し、また、H1,H2A,H2B,H3には、それぞれ6種、3種、4種、2種のバリアントが存在する。ジーンノックアウト法を用いて、ニワトリBリンパ細胞株DT40で21コピーを含む約57kbの領域を欠失した変異株(Δ57kb)を作製した。4種のH1バリアント、2種のH2Bバリアントを同時に欠失しているこの変異株を解析し、以下のような結果を得た。 1、H1遺伝子群の特定メンバーに特異的なアンチセンスRNAプローブを用いたRNase protection assayで、野生株および変異株における、その転写産物と残りのメンバー転写産物量を測定し、自己補償機構の存在を明らかにした。 2、H2A,H2B,H3,H4遺伝子群に関しても、それぞれ、特定のメンバーのアンチセンスRNAプローブを用意し、野生株、変異株における残りの遺伝子の転写産物量を定量した結果、H2A,H2B,H3,H4全てのコアヒストン遺伝子群でも自己補償機構が作動することを明らかに出来た。 3、Actinomycin D存在下で同様に解析した結果、ヒストンmRNAの安定性に変化は認められなかった。 4、ヒストン画分を得、SDS-PAGEおよびacid-urea-PAGEで分析、定量した結果、蛋白質レベルでも、各ヒストンサブタイプが化学量論的に一定に保たれていることが明らかに出来た。 5、約半分のヒストン遺伝子数が欠失しても、増殖速度に変化は認められなかった。 6、この欠失変異株の2D-PAGEでの蛋白質パターンが野生株のそれと異なることから、各ヒストンバリアントは特定遺伝子の発現制御に係わっていることが示唆された。
|