研究概要 |
ミクロソーム酵素であるヘムオキシゲナーゼには二つのイソ酵素があり,HO-1,HO-2と呼ばれている.両酵素ともヘムをヒドロキシヘム,ベルドヘム,ビリベルジン・鉄錯塩を経てビリベルジンに酸化的に分解する.本酵素は単純蛋白質であるが基質であるヘムを結合してできた酵素・基質複合体はヘム蛋白質の性質を持ち,その吸収像はミオグロビンのそれと酷似する.本酵素による反応ではヘムが酸素活性化のための補欠分子族としても機能している.従って,ミオグロビン型のヘムがどのように酵素を活性化できるかは興味深い.私共は先に本酵素にヘムが結合するとき,そのHis25を第五配位子(近位His)とすることを見いだした.然し,酸素の結合や活性化に関与すると思われる第六配位子については種々論議はあるものの未だ特定されていない. HO-1,HO-2の両酵素間あるいはそれぞれの酵素の動物種間で高度に保存されている部位があり,そのなかにHis132がある.従ってこのHis132が第六配位子である可能性が高いと推測されてきた.実際,1996年に米国のWilksらによってそうであると報告された.然し私共はその前年にHis132はヘム分解活性には関与していない事を既に報告しているので,再度この食い違いを検討した. その結果,やはりHis132は第六配位子ではない事を再確認し,更に両者の相違が何故生じたのかについても検討し以下の見解を得た.His132を他のアミノ酸に換えると大腸菌内で封入体として発現される.その封入体の尿素処理によって得られた再生酵素は本来の高次構造に戻ったもの(活性型)とどこかに異常のあるもの(不活性型)との混合物であったため,Wilksらが誤解したのであろう.
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