研究概要 |
骨格筋の収縮において、トロポミオシン-トロポニン制御タンパク分子は細胞内のカルシウムイオン濃度によりモータータンパク分子(アクトミオシン)をオンとオフとする分子スイッチとして働く。カルシウムイオンのトロポニンCへの結合によってこの分子スイッチがどのように構造変化を伝えていくのかを、アクチン、トロポミオシン及びトロポニンIの特異的な部位に蛍光色素を導入し、それらの間の蛍光エネルギー移動(FRET)を測定することによって、再構成した筋肉の細い繊維上でこれら分子がどのような相対的な動きをするのかを調べた。 (i)トロポミオシンのアクチンフィラメント上でのカルシウムイオン濃度変化による動きを調べる為に、今まで特異的な色素導入部位として知られているCys-190のかわりとなる部位としてMutant-Tm(Ser-87-Cys,Cys-190-Ile)を使用し、87番目の位置に色素を導入し、これとアクチン上のLys-61との色素の距離を測定したが、これはカルシウム濃度変化による変化は見られなかった。 (ii)Mutant TnI(Ala9->Cys,Cys-48->Ala,Cys-64->Ala,Cys-133->Ser,Trp160->Phe)のCys-9に色素IAEDANSを導入し、それとTmのCys-190に結合させたDABMIとの蛍光エネルギー移動をいろいろな条件で測定した。TnIとTmだけでは蛍光エネルギー移動は見られなかったが、これにF-actinを加えるとFRETが見られ、これから距離は5.1nmと計算された。Caイオン存在中TnCを加えるとFRETは大きく減少し距離は6.6nm以上と計算された。これはTmのCys-190がTnIの結合部位に近いという報告と一致しており、又、FA/Tm上でTnIはTnTなしでも特異的位置に結合することを示し、又TnTが無いとCaイオン存在下TnCによりFA/Tmから解離してしまうことを示唆している。さて、Mutant TnIにTnT&TnCを加えてTnを再構成し、これとDABMI-TmとのFRETをFactin存在下で測定した。Caイオンの有る無しで距離はそれぞれ6.3nmと5.5nmであった。
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